幻想小説とミステリ 〜『奇談蒐集家』(太田忠司/創元推理文庫)〜

奇談蒐集家 (創元推理文庫)

奇談蒐集家 (創元推理文庫)

“求む奇談!”新聞の片隅に載った募集広告を目にして、「strawberry hill」を訪れた老若男女が披露する不思議な体験談

酒場で披露される奇談を解き明かす安楽椅子ミステリ。


実際に体験した本人にとっては何事にも不思議な話=奇談

奇談というと僕が思い出すのは「世にも奇妙な物語」です。
世にも奇妙な物語」が面白いように、
その話が起こりえないような展開、謎を持っていれば物語として魅力的であり作品として成立します。


しかし、かの京極堂が言うように「この世には、不思議なことなど何もないのだよ」と
その不思議をロジックで解き明かせば、ミステリになります。


不思議な話で終われば奇談であり、
その謎がロジックで解き明かされれば、ミステリ。


解説にも書かれてありますが
そんな幻想小説とミステリの両方が楽しめるのが本作のすてきなところです。


本作には7編の短編がありますが
個人的に好きなのは「金眼銀眼邪眼」
「夜の子供」という幻想小説らしく、そしてそこからの明かされる結末もとても好みです。


そして最後の「すべては奇談のために」
なぜ彼らは奇談を集めるのか。
それまでの短編が持っていた「いかにも」な雰囲気も伏線にする
結末は秀逸です。

一編一編も短く、読みやすいため多くの人に勧められる一品です。